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巡るノルン

2007.12.17 *Mon
今日は烙ちゃんの誕生日です。ハピバー☆正式名称は淙烙さん。漢字送ってもらった♪
それで、本来なら私から献上せねばならないのに、烙ちゃんがプレゼントくれました!本当は前後なんですが、1つに纏めちゃいますね。





じんわりと水が浸み入るように覚醒した意識は、かわぶき屋根の裏側を認識した。一瞬今の状況がよくわからなかったが、妹を捜す内に倒れたのだと理解する。
身体は重く、動かせそうにない。だが家の中は適度な暖かさで包まれていた。ゆっくり横を向くと、囲炉裏に小さな火が灯っていた。
自分を介抱してくれたのであろう人物に対する感謝と、己れの身体の弱さへの嫌悪と、愛する夫に向かう悔恨が緋真の胸を去来する。
黙って出たわけではないし、そんなに長い時間が経っているわけでもなさそうだが、このままここにこうして寝ていれば夫が心配するだろう。そしてそれは、夫の命で納得はしたが緋真を疎ましく思っている連中に、彼女を追い出そうとする契機となる。緋真は夫を愛しているし、夫は彼女に精一杯の愛を与えているが、緋真は己れのことで彼を悩ませるのを心苦しく思っていた。当然、それは嬉しくもあるのだが。
と、からりと家の扉が開いた。同時に冬の空気が暖められていた室内に侵入してくる。視線をずらせば、一人の少年が立っていた。光の加減で純白にも銀にも見える髪と、深い翡翠の双眸の少年だった。
「気分はどうだ?」
扉を閉めた少年は緋真の側に寄って、そっと額に手を乗せた。冷たくて心地よい少年のそれが、次は彼自身の額にあてられた。
「熱は下がったみてぇだな。アンタ、外で倒れてたんだよ。あのままじゃまずかったから、とりあえずここに連れてきたんだけど」
少年に助けられながら、緋真は身を起こした。彼が差し出してきた水を飲んで、彼女は少年に軽く頭を下げた。
「助けていただいて、ありがとうございます」
「いいよ。当然のことをしたまでだから」
少年はにっと笑うと、緋真の隣に腰を下ろした。
「なぁ」
「はい?」
「アンタ、瀞霊廷の人間だろ?こんなとこで何してるんだ?」
少年の問いはもっともなものだった。緋真は瞼をやや伏せた。
「……妹を、捜しているのです」
「妹?」
「はい…私に似た…」
「ふぅん……」
少年は緋真の顔を覗き込んだ。眉を寄せて記憶を遡っているらしい。
「…この辺りじゃそんな顔は見なかったなぁ…あ、でも…」
彼はふと思い出して、瞳を煌めかせた。
「ついこの前までこの家には人間がいてな、そいつ霊術院に行ったんだが、アンタに似てるような友達がいるとか言ってたぜ」
「…私に?」
「ま、そいつが言ってるのと俺が考えてるのが同じとは限んねぇけど」
とりあえず、調べてみて損は無ぇんじゃねぇの。少年はそう告げてお茶をすすった。
暫く呆然としていた緋真だが、少年の言葉を信じてみる価値はある。この少年はきっと緋真に嘘はつかない――それは緋真の直感であったのだけど――。まるで雪のように、白く、潔白であり続けるだろう。
「さて」
少年は湯飲みを置いて立ち上がると、緋真に手を出した。
「そろそろ帰らねぇとヤベェだろ?瀞霊廷まで送っていってやるよ」
緋真は目をしばたたかせた。流魂街に住む一少年が、強固な門をどう開けるというのか。
そんな彼女の心中を読み取ったのか、少年は緩く唇を歪めた。



瀞霊廷西側・白道門。少年は慣れた様子で門に近づいていく。緋真は後から不安そうについていた。
「兒丹坊!」
少年が声を張り上げると、緋真の目の前に門番の巨体が降りてきた。思わず目を丸くする彼女の前で、なんと少年は門番と友好に話をはじめた。
「冬獅郎でねぇが。元気だたが?」
「あぁ、この通りだ。…そんでな、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「何だす?」
「あの人、瀞霊廷(なか)に入れてやってくれよ」
少年が指した方向を向いた兒丹坊は、緋真を瞳に映して破顔した。
「さっぎ通っだお方だな。通廷証あるが?」
彼に言われるままに懐からそれを出すと、兒丹坊は少年と彼女に背を向けて門を開け始めた。重い壁が彼の気合いと共に轟音を立てながらその口を開いていく。いつみても凄いと思う迫力に、緋真は眼を輝かせた。
扉が完全に開ききると、緋真はもう一度少年に頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。扉まで開けて下さって」
「開門したのは兒丹坊。俺は何もしていない」
少年は明後日の方向に顔を背けた。照れているのだろうその様子を、緋真は柔らかく微笑みながら見ていた。
ゆっくりと扉の下を通る。流魂街の貧しく優しい獣の様な気配が、瀞霊廷の高貴で冷酷な清廉されたそれに消されていく。
緋真はある程度進んだところで振り返った。
「あの。…名前を、教えて貰えますか」
特に理由などなかった。緋真自身も、このようなことを訊いているのが不思議だった。ただ、訊かなければならないような気がしたのだ。
少年もそう思ったのだろう、訝しげに眉をひそめる。だがそんなに固執することもなく、閉まりつつある扉の向こうで口を開いた。
「――日番谷。日番谷、冬獅郎だ」
科白が緋真の耳に届くのと同時に、門が顎を閉じた。尸魂界にある二つの世界が隔絶された。
日番谷冬獅郎。その名が、緋真の胸の奥にするりと這入りこんでは、ばらばらに散って溶けていった。



流魂街で日番谷冬獅郎と名乗る少年に出会ってから、まるで故意であるかのように寒波が唐突に襲ってきた。病弱で常に風邪に似た症状が続いている緋真は、ここ数日そのせいで屋敷から出られずにいた。
医師からも夫たる白哉からも、安静を言いつけられている。日々つまらないが、白哉に迷惑をかけるわけにもいかないため――勿論緋真はそれが彼女の容体を気にしてのことであるとわかっているのだが――こうして大人しくしている。
「緋真」
不意に障子が開いた。護廷十三隊が一、六番隊副隊長としての勤めを終え、白哉が帰ってきたのだ。
「おかえりなさい、白哉様」
「あぁ」
彼の返答はいつも簡潔だ。
「身体の調子は」
「幾分いいようです」
ふわりと微笑むと、白哉はそうかと頷いて彼女の手に触れた。緋真の微熱におかされたそれと、冷たい白哉の体温が混ざり合う。
「……白哉様」
名を呼ぶと、白哉が視線で先を促す。
「お願いがあるのです」
緋真は、先日流魂街であったことを話した。白哉は一言も挟むことなく黙ってきいている。
「もし霊術院に妹がいたら、あの少年に礼を言いたいのです」
白哉も多忙であるし、真王霊術院は独立した教育機関だ。朽木家当主の名の許であろうと、実際緋真の妹の捜索が実施されるのは当分先のことであろう。仮に妹がそこにいたとしても、かの少年が流魂街にいるとも限らない。流魂街の魂は六十年経つと自然に転生するからだ。
だが、緋真はあの少年にもう一度会いたかった。次に逢う時は、是非とも妹が見つかった時がよかった。少年は緋真のことを覚えていないかもしれない。そういうことがあり得るとわかっていても。
あの少年に会いたい。それは恋慕の情から来るものではない。何が原因なのかは彼女にも理解や推測できなかった。
白哉はそんな妻の想いをきちんと了解していた。数年前、まだ尸魂界(ここ)に来てすぐ捨ててしまった妹を捜しているのだ。たった一度、しかもたまたま倒れていたところを助けてもらっただけの人間に礼を言いたいなど、愛しい妻の様な者でなくてはなかなか思わぬであろう。
「わかった。出来るだけ早くに事が進むよう、取り計らってみよう」
すると緋真はほう、と息をついた。ありがとうございます、と安堵した声音が白哉の耳朶を叩いた。
それに表情を緩くして、白哉は緋真の額に触れるだけの唇を落とした。
霊術院に通い、正式に死神となれば、屋敷の者もとやかく言うまい。
今握りしめている緋真の掌から暖かさが亡くなったのは、その次の春が訪れる前のことだった。





それから何年経っただろうか。
最愛の妻を亡くした後、白哉は真王霊術院で緋真の妹を捜しあて、朽木家に招いた。本当に、緋真によく似た娘だった。妹は妹でも、養妹ではなく義妹であることを知っているのはほんの一握りだ。
白哉は、この妹から距離を置いていた。
というのも、家の体裁というのもあるが、あまりにも緋真に生き写しで――彼女を病から、彼女を脅かす全てのものから守れなかったことが、彼の心に深い傷を抉っているからだ。
妹はさぞ不安なことだろう。
それでも白哉には、彼女に触れる勇気はなかった。
「白哉」
そんな折り、六番隊執務室の扉を軽く叩いてから現れたのは、十三番隊隊長浮竹十四郎だった。妹――ルキアの、直属の上司でもある。
「どうした。兄が自らここに来ようなど」
「たまには自分で歩くさ。ずっと寝てばかりでは、根が生えてしまう」
浮竹は破顔した。
元来病をかかえている彼は、緊急か隊長格級の書類等でなければやって来ることはない。
つまりは、そういう話題であるということ。
「前の隊首会で議論に出たことなんだけど、その時白哉いなかっただろ」
彼が持つ書類をよく見えるように、白哉は机上のそれを端へ寄せた。
「……十番隊隊長選抜?」
「ついこの前、亡くなったろ?」
浮竹に言われ、そういわれればそうだったことを思い出す。
前十番隊隊長は、現世における大虚殲滅の際に命を落とした。暫くは十番隊自体も喪に服していたのだが、いつまでも隊長位が空席というわけにもいかないのであった。
そこで名が上がっているのが――。
「…………?」
「日番谷冬獅郎。十番隊第四席だ。まだ小さいんだが、それなりの実力はあるよ」
彼の言にある小さい、とは、年齢と身長のことを指す。
浮竹に言われずともわかっていた。これまでに、護廷十三隊隊長の座につくための基準、八名以上の推薦・承認を受けている。白哉が承認すれば、日番谷は確実に十番隊隊長に収まろう。
この者が、幾分前に緋真を助けた少年か。白哉の直感がそう告げた。
――興味が、ある。
日番谷冬獅郎。彼が作る、その未来が。
白哉は静かに、承認の欄に判を押した。




そこには、先客がいた。
跳ねた白銀の髪、長さ故に背に君臨する斬魄刀、隊長格を示す白い羽織。
「……日番谷」
ゆるりと名を紡ぐと、“神童”が振り返る。
「…兄がここに来るとはな」
「…昔の話だ」
日番谷は多くをかたらない。
少しだけ名残惜しそうに墓を見てから、彼は身を翻した。
「日番谷」
「……」
「礼を言う」
すれ違いざまに言葉を投げ掛けた。足を止める少年と、進める青年。
「…別に」
ぶっきらぼうに返して、彼は瞬歩も使わずに去っていく。
日番谷には事の顛末がわかったのだ。人より一歩退いたところから物事を見定める。
白哉は墓の前に立った。
「…緋真」
見えるか、緋真。あの時お前を助けた少年が、今や隊長だ。
日番谷はお前のことを覚えていたよ。
聞こえるか緋真?
見えるか緋真?
この世界が、お前の妹が、私の姿が。
駆け巡る風に髪をもてあそばれる。
翻るそれを押さえたとき。
えぇ、届いております、白哉様。
そんな声が、聞こえた、気がした―――。
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