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前奏曲/雪の綺想曲

2007.11.27 *Tue
風の柩のキャラクター一覧書いておいて、いざ書き始めてみれば綺想曲(笑)えっと、物語のタイトルは『雪の綺想曲』です。ちょっと試験的なのですが、この話は順番ではなく、お題に沿いつつバラバラに書いていこうかなと思ってます。
今まで書いて来た中で、初の喫煙者かも…!




「…祈咲」
決して広いとは言えないワンルームマンションに2人は暮らしていた。
少女は、銀色の月に囚われたかのように窓の外の夜空を見つめていた。祈咲《キサキ》と名を呼ばれ緩慢な動きで顔を青年の方へと動かす。月光に照らされ白さを増したかのような透き通った肌。紫水晶の瞳は、だが、光を映してはいない。
「蒼…眠っていても良かったのに」
ゆっくりと立ち上がった少女は、慣れているのだろうか、見えない事に全く不安を感じる様子も無く青年の横たわるベッドへと足を運ぶ。
恋人と呼ぶにはあまりにも幼い少女と、父親と称するには若すぎるその青年。
手探りで体温を探る祈咲の手を取り、蒼は普段より冷たいその手を包み込み、華奢な少女を引き寄せる。
「祈咲はこんなに手が冷たくなっても気にしないから、放っておいたら直ぐに風邪を引いてしまう」
「私一人が風邪を引いて倒れたからと気にするような人ではないでしょう、蒼は」
本気か、戯れか。男の心配を余所に祈咲は自らベッドの片隅に身体を滑り込ませる。棘のある言い方ではあったが、まるでそんな会話が日常茶飯事であるかのように、蒼も再び身体を横たえた。
「…心配くらい、するさ」
「口先では何とでも言えるものよ」
未だ少女と形容するに相応しい彼女だが、まるで大人であるかのようなきっぱりとした口調で言葉を紡ぐ。白いシーツに淡く月の光を纏う金の髪が散らばるのを横目で捉えながら、男は微妙な空気を誤魔化すようにチェストに置かれた煙草へと手を伸ばすが、
「部屋の中で煙草は止めて」
少女の声音に遮られる。判った、と両手を上げて答えると頷きを返して彼女は狭いベッドの中で身体を丸めて長い髪に指を絡ませる。どうやら癖、らしい。この小さな部屋《鳥籠》にやって来て以来、祈咲《小鳥》はそうやって眠る。
「…おやすみ、祈咲」
優しく告げた言葉に返答は無かった。それを確認してから、蒼は煙草の箱と黒い携帯を手にベランダへと身を滑らせる。
以前少女に煙草の悪害成分について長々と聞かされたが、それでも男は喫煙を止める事は出来なかった。
紫煙を吐き出してから携帯のメモリーからある電話番号へと電話を掛ける。呼び出し音数回。直ぐに電話越しに女性の声が聞こえた。
「…ボスからの命令だ」
今夜は月が美しい。目の見えない祈咲にも届く光だったのだろうか。
「ターゲットはリストJの135番。…あぁ、彼の妻と息子は殺すなという指令もある」
スッと男の目が細められる。先程少女に向けていた優しい眼差しとは異なる…例えるならば獲物を射抜くような鋭い眼光。
「…判った、明日本部で打ち合わせよう。おやすみ」
通話を終えると携帯電話を徐にポケットへ押し込め、紫煙を再び吐き出す。
冷たい夜風で先程までの眠気は去ってしまった。だがあまり長く外に居ると部屋で待つ少女がまた不平を言う。大人びた口調で自分を叱る彼女の姿を思い浮かべ、思わず口角を緩めながら煙草を灰皿へと押し付ける。
室内の、少女が居るベッドに戻ると既に彼女は眠っていた。起こさないように傍らに身を横たえる。小さな寝息と、その体温が心地良かった。
本来ならば決してこのような少女が自分の傍に居てはいけないのだ。何度となくそれを思ったが、蒼には祈咲を手放せない理由があった。…いや、もしかしたらその理由に縋って現実を手元に残そうとしているのかもしれない。
「祈咲…」
眠る少女の絹糸のように細い髪を撫で、彼女を起こさぬ声音で呼び掛ける。勿論返答は無く、問いたかった言葉は男の中に消えた。



綺想=祈蒼
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