This Archive : 2007年12月

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蛇の毒

2007.12.21 *Fri
烙ちゃんからの頂き物PART………幾つだろう?今回はギン×ルキアです!本人さんは最初は上げる事に抵抗してましたが、「好きにして」と最後に言っていたような記憶があるので上げちゃいます。烙ちゃん、貴女の文が下手な訳無いでしょ!今後も楽しみにしてます♪(私信)
不思議がられたりするんですけど、ギンルキ好きです。烙ちゃんは日番谷君が好きです。
幾つか他に掲載許可貰っているものがあるので、折を見てアップしていきますね。
ではでは、烙ちゃんの作品をお楽しみ下さいませ♪





靴の音が響く、真珠の白さを湛えた宮殿、虚夜宮。広大かつ幻想に満ちたそこは、今や何名かの侵入者を招き寄せてしまっていた。
とはいえ、番人のように、ここには数多もの破面が配置されている。今更、新参者のギンが出向くまでもなかった。
彼は一人宮殿の外に比較的近い場所へ向かっていた。それを知る者はいない。否、もしかしたら藍染くらいは知っているのかもしれない。何せここの主は彼なのだから。何れにしても、ギンにはあまり関係のないことであった。
開けた空間、窓の向こうに、擬似である大空を控えたその部屋に、ギンの用事がいた。
「あァ――やっぱ、此処やってんねぇ」
常に口元に浮かぶ笑みを深くして、ギンは歩を進めた。
彼の視線の先には一人の少女。解放されていない斬魄刀を握り締めながら、しかしその小さな身体は血の海に沈んでいる。
「来て…しもうたんね。―――ルキアちゃん」
かがみこんで覗いて見るも、完全に意識を失っているらしく、返答はない。ただ、少しずつ薄くなっていく微かな呼吸だけがきこえている。
わかっていた。あの娘――井上織姫を迎えた時から、彼女を助けに現世の数人が来るだろうことを。そして、その際ルキアとその幼馴染が合流することも。
「こんなになるまで闘おうて――女の子は身体大事にせなアカンよ? ルキアちゃん、嫁入り前なんやから」
おどけた様に口から言葉が紡がれる。聞く人はいない。
ギンは口端を吊り上げた。今のところギンの予想通りの進み方だが、これから彼等はどんなことで己れを楽しませてくれるだろうか。
そう、ギンが藍染についたのも、全てはこの世界をより楽しむためだ。
そのための重要な、要の玩具(おもちゃ)が、ルキアだった。仔猫が威嚇するのに爪を立てるのと同様に、牙を剥き噛みつきたいのを懸命に堪えているその様が非常に愉快だ。
ルキアも、その他この世に生きる人は皆、彼の前で演劇を披露する役者(にんぎょう)だ。喜劇であろうと、悲劇であろうと、面白ければそれでいい。
他人に、特に正義を重んじる同胞――当面、という枕詞をつけねばならない――に言わせれば、狂っているのだろう。ギンは他者が己れに向ける視線の意味に気付いていたが、無視していた。それも彼の興味に起因する。
それを拒まなかったのは、一人の女性だけ。
彼女をも捨ててギンはここにいる。
もっと愉しい、演劇を観るがために。
「ねェルキアちゃん。こないなトコで死んだらアカンよ? まだまだ、愉しませてもらわな」
ギンはちらりと周囲を見回し、口元の三日月を歪めた。一人喋りながら触っていたルキアの髪から手を離す。
どうやら、招かれざる客人が来たようだ。一名、確実にこちらに向かっている。
一方的で短時間の逢瀬は終了した。
ルキアの身体に残った霊圧の残滓を、あの男は正確に読み取ることだろう。そして警戒を抱くに違いない。
当然、そうでなければ面白くない。
妹を選んだ彼がどんな巻物を魅せてくれるか――ギンは心底愉快そうに低く嗤った。
「じゃあねルキアちゃん。次はもっと、君が強うなってから遭お」
耳元から蛇の毒を垂らして、ギンは踵を返した。
全て総て、凍らせても構わないから。
そしたらまた、猛毒で融かしてあげるから。


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舞雪

2007.12.17 *Mon
少し前に烙ちゃんが袖白雪の本体が緋真さん似だと~とか素敵な事言ってくれちゃって、ズッキュンして書き始めてたら、素敵な作品頂いちゃいました…!スクロールして下の方にある「契約-side:Diamond dust」というお話です。丁度続きチックに出来そうかなぁ…。重ね重ね言いますが、烙ちゃんは天才物書きなんで、文体比べないで下さいね(真顔)隊長格と一般ピーポーの霊圧を比較するよーなもんです!
時間軸的には30巻の海燕戦の後みたいな感じです。





「く、っ…ぁ…」
僅かに身を動かすだけで身体中の神経が悲鳴を上げる。酷く身体が重たい。呻き声を上げて咳き込むと鉄の味が口一杯に広がった。肉体的な痛みと。それから己の無力さへの精神的な苦しみと。漆黒の相貌から涙が溢れた。
「助けたいの?」
不意にルキアの耳に女の声が届く。新たな敵か。だが既に自分にら戦う力など残されてはいない。
血の海の中、自由の効かない身体を必死に動かし顔を上げ…そして、ルキアは息を呑んだ。
いつの間に其処に居たのだろう。自らと良く似た風貌には愁いと優しさとが浮かべられ。身に纏った雪よりも白い衣が美しい。
見知らぬ女性。
だが、ルキアを誰よりも知っていて、
そして、ルキアがずっと会いたかった人。
「……緋真、様…」
名を呼ぶと女性は穏やかに微笑んだ。
何故彼女が此処に居るのか。何より緋真は50年前に死した筈だ。
動揺のあまり言葉を失うルキアの蒼白く血の気を失った頬に女はそっと手を伸ばす。
冷たい。
触れられた瞬間そう思ったが、その優しさ故か嫌悪は感じなかった。
「貴女の気持ちは良く判るわ。でも今はお休みなさい。貴女がこれ以上傷付く姿も、白哉様が悲しむお姿も見たくはない」
だが…。孤独な白い牢に身を置いた日々を思い出す。今頃織姫もきっと。数少ない女性の、今では友人とも呼べる存在。今彼女が感じているであろう悲しみと孤独が理解出来るからこそ、ルキアは一刻も早く彼女を救い出したかったのだ。だが気持ちとは裏腹に身体は動かない。このままでは無様にも息絶える方が先だろう。
唇を噛み締める少女の頬を一撫でし、女は言った。
「…貴女は1人では無い。勿論、貴女が助けたい彼女も。もう直ぐ白哉様が、いらっしゃるから」
「…兄様、が…?」
肯定を示す頷きを返されると、急に視界が白くぶれ始めた。安堵故であろう。以前は厳しく冷たかった兄も、今は優しい。既にルキアにとって安心出来る存在へと変わっていた。
女はただ穏やかに少女を見つめる。絡み合う視線。
意識を失う最後の瞬間、ルキアは力を振り絞って女の白い手を握り締め、
「…姉…様……っ!」
叫んだ。
掠れた、悲鳴に近いそれは、だが女の耳に届いたのだろう。
「……ルキア」
泣きたいのか、笑いたいのか女には判らなかった。愛しい妹の名を言の葉に乗せ、そっと伏せられた瞳の端から透明な雫が零れ落ちた。
酷いお方。
あれ程頼んだのに、私が姉だと明かしてしまったのですね。
この場には居ない夫へと心の中で語り掛ける。だが、恨み言を言った所で心を満たす暖かさは誤魔化せない。
ずっと後悔していた。あの日、幼いこの子を手放した自分の決断を。
決して、許してなどもらえないと思っていた。
姉と呼ばれる資格など無い。その気持ちは勿論今でも変わらない。
だが、姉様、と。ルキアの叫びが耳に焼き付いている。
嗚咽を堪えて妹の手を握り返し、微笑を浮かべる。
「ルキア…」
きっと、目覚めた時自分と話をした事は夢として記憶されるのだろう。だがそれでも構わなかった。
「今度こそ、…貴女を護るからね」
優しい声音で語り掛け、女は天を仰ぐ。目を閉じて吐息を吐き出すだけで、女の姿は緩やかに空気に溶けた。




後に残るのは、
意識を失った少女と
その手に握られた真っ白な斬魄刀だけ。
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契約-side:Diamond dust

2007.12.17 *Mon
今週の本誌発売前に書き上げた事を烙ちゃん、非常に嘆いてました。前回に引き続き、淙烙様の作品です。袖白雪の本体が緋真さんだったらネタ。緋真さん可愛いです。






暗く、冷たいところだった。
恐怖に怯える緋真の目の前で、突如として氷が舞い降りた。それはばらばらに砕け、そしてその破片から何かが形成されていった。
それはやがて人形をなし、眼を開いた。
《――……傍に、いたいですか?》
澄んだ色の声が、凍てつく空気を経由した。緋真は答えられず、しかし目の前の姿――深い深い、闇をも抱いたような翡翠の双眸に惹き付けられていた。
《いたいですか…? 妹の許に…夫の許に…》
その台詞に彼女ははっとした。
《もし…貴方が望むなら…そのようにすることもできます……》
但し、代償は大きい。氷と雪の肉体を持つその人は言った。
相手には己れが元々何であったかはわからない。こちらの記憶だけが残り、それを口に出すことは許さない。ましてや、どれほど永く待つかも不明。ただ独りで、この寂しい空間の中、待ち続けるのが運命づけられる。
《それでも良いと言うのならば…翁が授けましょう…》
迷う間など、なかった。
「それであの子の傍にいられるのなら…今度こそ、あの子を守れるのなら」
それくらいの代償、投げ出せる。
強い信念を持つ緋真に、ソレは微笑みかけた。
《貴方の想いは受け取りました…直ぐにでも、術式を開始致しましょう…》
左の掌の上に右手を乗せ、そのまま直線を引くように腕を移動させると、そこには一振りの斬魄刀が存在した。
緋真はその美しさに釘付けになった。柄も、刀身も、純白で塗り籠められた刀。
《袖白雪――此れが貴方の宿るモノです…》
その人はゆっくりと緋真に近づいて、彼女の両手に刀を預けた。
《何れ、貴方の大切に想う者が、この刀を取るでしょう…》
本当は、どの刀がどの人を択ぶかは、その時になってみないとわからないものなのですけどね。
小さく笑うと、鈴にも似た氷がしゃらしゃらと音をたてた。
《その辺りは、翁が根回ししておいて差し上げます。我が主とて、そうお怒りになりますまい》
「……主…?」
口元に微笑を刻み続ける存在が主と呼ぶのだ。それは即ち、この空間の主ということだろうか。
《いいえ。此処はあくまで翁の世界。主は、翁の主です》
緋真の思考を読み取った上での回答は、彼女を更なる混乱に陥れた。不可解そうに眉根を寄せる様子に、何れ解りますよ、と告げる。
その容姿が、緋真の記憶の琴線に引っかかった。
「……あ…」
この、姿は。もしや。
その先を口にすることはなかったが、緋真は確信を抱いていた。
《さて…そろそろ狭間(ゆめ)の終わりです…袖白雪…貴方に、翁と我が主の加護があらんことを――》
そして、緋真の意識は途絶えた。




それから何年もの間、彼女は彼女としてではなく待ち続ける。
暗く冷たい世界で、この名を呼んでくれるまで、ずっと――。
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巡るノルン

2007.12.17 *Mon
今日は烙ちゃんの誕生日です。ハピバー☆正式名称は淙烙さん。漢字送ってもらった♪
それで、本来なら私から献上せねばならないのに、烙ちゃんがプレゼントくれました!本当は前後なんですが、1つに纏めちゃいますね。





じんわりと水が浸み入るように覚醒した意識は、かわぶき屋根の裏側を認識した。一瞬今の状況がよくわからなかったが、妹を捜す内に倒れたのだと理解する。
身体は重く、動かせそうにない。だが家の中は適度な暖かさで包まれていた。ゆっくり横を向くと、囲炉裏に小さな火が灯っていた。
自分を介抱してくれたのであろう人物に対する感謝と、己れの身体の弱さへの嫌悪と、愛する夫に向かう悔恨が緋真の胸を去来する。
黙って出たわけではないし、そんなに長い時間が経っているわけでもなさそうだが、このままここにこうして寝ていれば夫が心配するだろう。そしてそれは、夫の命で納得はしたが緋真を疎ましく思っている連中に、彼女を追い出そうとする契機となる。緋真は夫を愛しているし、夫は彼女に精一杯の愛を与えているが、緋真は己れのことで彼を悩ませるのを心苦しく思っていた。当然、それは嬉しくもあるのだが。
と、からりと家の扉が開いた。同時に冬の空気が暖められていた室内に侵入してくる。視線をずらせば、一人の少年が立っていた。光の加減で純白にも銀にも見える髪と、深い翡翠の双眸の少年だった。
「気分はどうだ?」
扉を閉めた少年は緋真の側に寄って、そっと額に手を乗せた。冷たくて心地よい少年のそれが、次は彼自身の額にあてられた。
「熱は下がったみてぇだな。アンタ、外で倒れてたんだよ。あのままじゃまずかったから、とりあえずここに連れてきたんだけど」
少年に助けられながら、緋真は身を起こした。彼が差し出してきた水を飲んで、彼女は少年に軽く頭を下げた。
「助けていただいて、ありがとうございます」
「いいよ。当然のことをしたまでだから」
少年はにっと笑うと、緋真の隣に腰を下ろした。
「なぁ」
「はい?」
「アンタ、瀞霊廷の人間だろ?こんなとこで何してるんだ?」
少年の問いはもっともなものだった。緋真は瞼をやや伏せた。
「……妹を、捜しているのです」
「妹?」
「はい…私に似た…」
「ふぅん……」
少年は緋真の顔を覗き込んだ。眉を寄せて記憶を遡っているらしい。
「…この辺りじゃそんな顔は見なかったなぁ…あ、でも…」
彼はふと思い出して、瞳を煌めかせた。
「ついこの前までこの家には人間がいてな、そいつ霊術院に行ったんだが、アンタに似てるような友達がいるとか言ってたぜ」
「…私に?」
「ま、そいつが言ってるのと俺が考えてるのが同じとは限んねぇけど」
とりあえず、調べてみて損は無ぇんじゃねぇの。少年はそう告げてお茶をすすった。
暫く呆然としていた緋真だが、少年の言葉を信じてみる価値はある。この少年はきっと緋真に嘘はつかない――それは緋真の直感であったのだけど――。まるで雪のように、白く、潔白であり続けるだろう。
「さて」
少年は湯飲みを置いて立ち上がると、緋真に手を出した。
「そろそろ帰らねぇとヤベェだろ?瀞霊廷まで送っていってやるよ」
緋真は目をしばたたかせた。流魂街に住む一少年が、強固な門をどう開けるというのか。
そんな彼女の心中を読み取ったのか、少年は緩く唇を歪めた。



瀞霊廷西側・白道門。少年は慣れた様子で門に近づいていく。緋真は後から不安そうについていた。
「兒丹坊!」
少年が声を張り上げると、緋真の目の前に門番の巨体が降りてきた。思わず目を丸くする彼女の前で、なんと少年は門番と友好に話をはじめた。
「冬獅郎でねぇが。元気だたが?」
「あぁ、この通りだ。…そんでな、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「何だす?」
「あの人、瀞霊廷(なか)に入れてやってくれよ」
少年が指した方向を向いた兒丹坊は、緋真を瞳に映して破顔した。
「さっぎ通っだお方だな。通廷証あるが?」
彼に言われるままに懐からそれを出すと、兒丹坊は少年と彼女に背を向けて門を開け始めた。重い壁が彼の気合いと共に轟音を立てながらその口を開いていく。いつみても凄いと思う迫力に、緋真は眼を輝かせた。
扉が完全に開ききると、緋真はもう一度少年に頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。扉まで開けて下さって」
「開門したのは兒丹坊。俺は何もしていない」
少年は明後日の方向に顔を背けた。照れているのだろうその様子を、緋真は柔らかく微笑みながら見ていた。
ゆっくりと扉の下を通る。流魂街の貧しく優しい獣の様な気配が、瀞霊廷の高貴で冷酷な清廉されたそれに消されていく。
緋真はある程度進んだところで振り返った。
「あの。…名前を、教えて貰えますか」
特に理由などなかった。緋真自身も、このようなことを訊いているのが不思議だった。ただ、訊かなければならないような気がしたのだ。
少年もそう思ったのだろう、訝しげに眉をひそめる。だがそんなに固執することもなく、閉まりつつある扉の向こうで口を開いた。
「――日番谷。日番谷、冬獅郎だ」
科白が緋真の耳に届くのと同時に、門が顎を閉じた。尸魂界にある二つの世界が隔絶された。
日番谷冬獅郎。その名が、緋真の胸の奥にするりと這入りこんでは、ばらばらに散って溶けていった。



流魂街で日番谷冬獅郎と名乗る少年に出会ってから、まるで故意であるかのように寒波が唐突に襲ってきた。病弱で常に風邪に似た症状が続いている緋真は、ここ数日そのせいで屋敷から出られずにいた。
医師からも夫たる白哉からも、安静を言いつけられている。日々つまらないが、白哉に迷惑をかけるわけにもいかないため――勿論緋真はそれが彼女の容体を気にしてのことであるとわかっているのだが――こうして大人しくしている。
「緋真」
不意に障子が開いた。護廷十三隊が一、六番隊副隊長としての勤めを終え、白哉が帰ってきたのだ。
「おかえりなさい、白哉様」
「あぁ」
彼の返答はいつも簡潔だ。
「身体の調子は」
「幾分いいようです」
ふわりと微笑むと、白哉はそうかと頷いて彼女の手に触れた。緋真の微熱におかされたそれと、冷たい白哉の体温が混ざり合う。
「……白哉様」
名を呼ぶと、白哉が視線で先を促す。
「お願いがあるのです」
緋真は、先日流魂街であったことを話した。白哉は一言も挟むことなく黙ってきいている。
「もし霊術院に妹がいたら、あの少年に礼を言いたいのです」
白哉も多忙であるし、真王霊術院は独立した教育機関だ。朽木家当主の名の許であろうと、実際緋真の妹の捜索が実施されるのは当分先のことであろう。仮に妹がそこにいたとしても、かの少年が流魂街にいるとも限らない。流魂街の魂は六十年経つと自然に転生するからだ。
だが、緋真はあの少年にもう一度会いたかった。次に逢う時は、是非とも妹が見つかった時がよかった。少年は緋真のことを覚えていないかもしれない。そういうことがあり得るとわかっていても。
あの少年に会いたい。それは恋慕の情から来るものではない。何が原因なのかは彼女にも理解や推測できなかった。
白哉はそんな妻の想いをきちんと了解していた。数年前、まだ尸魂界(ここ)に来てすぐ捨ててしまった妹を捜しているのだ。たった一度、しかもたまたま倒れていたところを助けてもらっただけの人間に礼を言いたいなど、愛しい妻の様な者でなくてはなかなか思わぬであろう。
「わかった。出来るだけ早くに事が進むよう、取り計らってみよう」
すると緋真はほう、と息をついた。ありがとうございます、と安堵した声音が白哉の耳朶を叩いた。
それに表情を緩くして、白哉は緋真の額に触れるだけの唇を落とした。
霊術院に通い、正式に死神となれば、屋敷の者もとやかく言うまい。
今握りしめている緋真の掌から暖かさが亡くなったのは、その次の春が訪れる前のことだった。





それから何年経っただろうか。
最愛の妻を亡くした後、白哉は真王霊術院で緋真の妹を捜しあて、朽木家に招いた。本当に、緋真によく似た娘だった。妹は妹でも、養妹ではなく義妹であることを知っているのはほんの一握りだ。
白哉は、この妹から距離を置いていた。
というのも、家の体裁というのもあるが、あまりにも緋真に生き写しで――彼女を病から、彼女を脅かす全てのものから守れなかったことが、彼の心に深い傷を抉っているからだ。
妹はさぞ不安なことだろう。
それでも白哉には、彼女に触れる勇気はなかった。
「白哉」
そんな折り、六番隊執務室の扉を軽く叩いてから現れたのは、十三番隊隊長浮竹十四郎だった。妹――ルキアの、直属の上司でもある。
「どうした。兄が自らここに来ようなど」
「たまには自分で歩くさ。ずっと寝てばかりでは、根が生えてしまう」
浮竹は破顔した。
元来病をかかえている彼は、緊急か隊長格級の書類等でなければやって来ることはない。
つまりは、そういう話題であるということ。
「前の隊首会で議論に出たことなんだけど、その時白哉いなかっただろ」
彼が持つ書類をよく見えるように、白哉は机上のそれを端へ寄せた。
「……十番隊隊長選抜?」
「ついこの前、亡くなったろ?」
浮竹に言われ、そういわれればそうだったことを思い出す。
前十番隊隊長は、現世における大虚殲滅の際に命を落とした。暫くは十番隊自体も喪に服していたのだが、いつまでも隊長位が空席というわけにもいかないのであった。
そこで名が上がっているのが――。
「…………?」
「日番谷冬獅郎。十番隊第四席だ。まだ小さいんだが、それなりの実力はあるよ」
彼の言にある小さい、とは、年齢と身長のことを指す。
浮竹に言われずともわかっていた。これまでに、護廷十三隊隊長の座につくための基準、八名以上の推薦・承認を受けている。白哉が承認すれば、日番谷は確実に十番隊隊長に収まろう。
この者が、幾分前に緋真を助けた少年か。白哉の直感がそう告げた。
――興味が、ある。
日番谷冬獅郎。彼が作る、その未来が。
白哉は静かに、承認の欄に判を押した。




そこには、先客がいた。
跳ねた白銀の髪、長さ故に背に君臨する斬魄刀、隊長格を示す白い羽織。
「……日番谷」
ゆるりと名を紡ぐと、“神童”が振り返る。
「…兄がここに来るとはな」
「…昔の話だ」
日番谷は多くをかたらない。
少しだけ名残惜しそうに墓を見てから、彼は身を翻した。
「日番谷」
「……」
「礼を言う」
すれ違いざまに言葉を投げ掛けた。足を止める少年と、進める青年。
「…別に」
ぶっきらぼうに返して、彼は瞬歩も使わずに去っていく。
日番谷には事の顛末がわかったのだ。人より一歩退いたところから物事を見定める。
白哉は墓の前に立った。
「…緋真」
見えるか、緋真。あの時お前を助けた少年が、今や隊長だ。
日番谷はお前のことを覚えていたよ。
聞こえるか緋真?
見えるか緋真?
この世界が、お前の妹が、私の姿が。
駆け巡る風に髪をもてあそばれる。
翻るそれを押さえたとき。
えぇ、届いております、白哉様。
そんな声が、聞こえた、気がした―――。
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ギャグSS

2007.12.15 *Sat
29巻だったかな…何巻かは忘れちゃったんですけど、BLEACHの単行本の巻末オマケ漫画にルキアちゃんと同じステキなセンスの兄様が居ました。朽木家の美的感覚はどうなってんの!
結論。緋真の独創的な絵の才能に兄様感動→多大な影響を遺して緋真逝去→緋真と同じ血故か同じ美的センスのルキアが妹に→私のセンスを認めて下さるのは兄様だけです。
んで、蒼牙君とのお喋りで出て来たネタを早速小説に(笑)緋真さんにお友達が欲しかったので、学生さんな乱菊さんにご登場願いました。時間軸?何それ、美味しいのー?





「おかえりなさい、白哉様」
一日の仕事を終えて帰宅した男の耳に優しい女の声が入る。既に眠っているだろうと予測していた為、思わず彼は目を見開き其方へと視線を向けた。
「緋真、起きていたのか」
1つの灯火だけに照らされた室内は優しい橙色。並んで敷かれた布団の片方に座る、白い花のように可憐な少女。はい、と頷き微笑む彼女の表情につられたように白哉の口元が綻んだ。
「どうしても、白哉様にお見せしたい物があったのです」
「…見せたいもの?」
えぇ、と返事をしながら緋真は徐に立ち上がり、何やら部屋の隅に置かれた箱をゴソゴソと漁り始める。何事だろうかと考え込みながら楽な体勢で腰掛けた男の傍へと、何かを抱き締めて彼女は駆け寄る。
「これなのです」
広げられたものはパステルブルーの布だった。勿論ただの布切れではない。布のあちこちには愛らしい(ように白哉には見える)クマがあしらわれている。
「…寝間着、か?」
「はい、パジャマです。乱菊さんが現世へ行くと言っていたのでついでにお願いして…」
聞き慣れぬ名前に微かに男の眉が顰められる。確か以前緋真が散策中に貧血を起こした時に救出してくれた霊術院の学生だったか。考えを巡らせながら、キラキラと瞳を輝かせながらパジャマを差し出す愛しい妻と、自分が着るにはあまりに不似合いなパステルブルーのそれを見比べる。
悩む夫の姿を目にして、やはり嫌なのだろうかと緋真の瞳が悲しげに伏せられた。愛を持っての結婚の場合、大抵の夫は妻のこういう顔に弱いものである。この男もまた然り。揺れ動く心のままに言葉を返す前に、緋真はもう1つ手にしていた物をバッと広げた。
「私は、ピンクのウサギさんで…!」
「…判った、着よう」
恥より愛だ。夫婦の寝室に入って来るような不躾な輩も居ないだろう、と着る事に同意した白哉の言葉に緋真は嬉しそうに笑った。
普段は数年前に捨ててしまった妹への罪悪感故か、なかなか心からの笑みを見せない緋真。その笑顔を守る為なら何だってしてやろう。
にこにことする妻の柔らかな髪を一撫でして、男はパステルブルーのクマさんパジャマを着るべく彼女に背を向けた。





こんなん書いてますが、私は兄様好きです。緋真さんはもっと好きー♪ルキアちゃんは大好きー!私的にBLEACHの中で三強です。
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紫に見る面影

2007.12.14 *Fri
BLEACHに最近ハマりました。烙ちゃんに貸してもらいました☆そしてそれ以来、兄様兄様連発してます。朽木家(兄様&ルキアちゃん&緋真さん)ラブ!
で、叫びまくっていたら烙ちゃんがSSくれました♪ありがとう!掲載許可頂いたのでアップします。彼女とっても文章上手いんですよー!あ、烙ちゃんの文章読んだ後私の読まないで下さいね。
ルキアちゃんに優しい兄様が見どころです。緋真さぁぁぁぁんっ!




肌を刺す空気は、俄かに冬の匂いを連れてきている。あまりの多忙さに秋を味わう余裕もなく、あっという間に過ぎてしまった季節に想いを馳せた。
静かに廊下を歩くと、不意に白哉の視界に紫が入った。
「兄様」
ひらりと揺れる、小さな花々。
「兄様。竜胆がこんなに」
妹の黒瞳がいとおしげに眇られた。奥底にあるのは優しい光だ。
妹というのはこんなにも可愛い存在だっただろうかと疑問に思って、だがそれも全てはあの男のおかげなのだと理解すると、つくづく己れの今までの彼女に対する扱いが冷たかったことが悔やまれる。しかし一度浮上した後悔が暫く続くようなことはなかった。これからまた愛していけばいいのだ。死神(われわれ)の一生は長いのだから。
「…家の者に命じ、花瓶に生けておけ」
そうすればつつましやかな竜胆の花が、秋を忘れた屋敷の中に一時の秋を伝えることだろう。
ぱっと顔を輝かせ、人を呼びに去った妹の背中が、一瞬の後に同じ容姿を持つ者の面影を呼び覚ます。
――白哉様
――ねぇ白哉様。ほらこんなに、竜胆が。今年も綺麗に咲きました
鼓膜の裏を響いては消えていくそれに、白哉は仄かに笑みを刻んだ。
最愛の妻が愛した妹を、次こそ己れが守り抜こう。
一度失った誇りは恐れることなく再び華を開く。
冬という終りの時期に、その悲しみごと愛すと詠う、竜胆の様に。
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知りませんでした

2007.12.05 *Wed
クロームちゃん誕生日祝いを皐月さんと済ませ。そういえばルルーシュって冬生まれだったよなーいつだっけ。と、コンプリートガイドを開いてしまったのが運の尽き。
birthday:12月5日
へぇー………って今日!?
ごめんなさい。普段からチューリップチューリップと遊んでいたのに、誕生日なんて気にしてもいませんでした。





『C.C.…』
いつものように暇を持て余しながら雑誌を捲っていた彼女の意識を、不意に女の声が遮った。普段から大した用も無いだろうに、語り掛けてくる故人の声。騎士候の身分からブリタニア皇帝に寵愛されるまでに至った女性。そして、C.C.が契約を結んだルルーシュの実母。
「何か用か、マリアンヌ?」
そして、その彼女の息子は今は大人しく学校で学業に勤しんでいる事だろう。既に時計は昼を差している。
『えぇ。貴女が用も無いのに話し掛けるなと言ったから、今日は話を用意して来たわ』
「そうか、それは良い事だ。それで用件は?」
『今日はね、…あの子の誕生日なの』
ふと。C.C.が雑誌の頁を捲る手を止めた。そういえば、今朝はいつものように惰眠を貪る自分に今日くらいは起きろとか何とかと叫んでいた気がする。勿論そんな抗議は黙殺したが。
『後で祝ってやってくれないかしら。それから私からも、おめでとうって』
「お前と私が会話出来ると知ったら、色々面倒な事になる」
昔、幼い子供と生活を共にした事があったから、母性というものは理解出来た。
「後者は却下だ。…だが、祝ってやるくらいなら構わない」
だからこそ、可能な範囲の中で祝ってやりたいと思った。意識の中で女が安堵の吐息を零す。
『…ありがとう』
「礼など不必要だ。…たまには良いだろう、共犯者という枠を緩めてみるのも」
お互い素直にはなれない性質だからこそ、こんな日くらいは。微かに口元に笑みを浮かべ、何をしようかと少女は思考を巡らせ始めた。





《後書きチック》
ルルーシュ出て来ない。
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クロームちゃん生誕記念

2007.12.05 *Wed
…どちらかといえば、皐月さん(仮)に捧ぐ、かもしれない。
カウントダーウン☆とかやりたかったのが本心ですが、①イディオムに追われた②思い付いたのが遅かったので断念。書き始めたのが丁度24時間前位…書き上げられたのは奇跡に近い!何はともあれ、おめでとうございます♪
本誌の所為で暗いネタばかり思い付くけど…負けない!(笑)ギャグとシリアスが混在してます。多分楽しいのは私だけ。長いです。





「…――っ!?」
深夜の黒曜ランド。仲良く並んでいた寝袋の一方が勢い良く起き上がった。続いてもう一方の寝袋ももぞもぞと動き出す。
「柿ピー、お前も…」
「…あぁ、見た」
廃墟となった建物の窓であった部分から覗く空は未だ夜の気配を残している。深刻な表情で見つめ合う二人。その原因となるのは二人が見た『夢』に起因するのだろう。
「……言われた通りにするしかない。メンドイけど」
「明日起きたら考えれば良いって!あの女なんかどーれも良いんらからさっ!」
寝るっ!と大きく叫んで眠りに落ちようとした犬が再び悲鳴を上げて目を覚ますまでに半刻も掛からず。渋々、といった具合に彼らは二人揃って朝を告げる鳥がさえずる中出掛けて行ったのだ。



特に用事も無かった為、この日のクロームはすっかり日が昇った頃に目を覚ました。廃墟であるこの黒曜ランドの朝はとても気持ち良い。(窓が無いから)窓を開ける必要も無く朝の気持ち良い(冬は寒い)風が部屋を吹き抜けていくのだ。そんな冷え切った部屋で毛布一枚。良くグッスリと眠れたものだと感心しつつ、ゆっくりと彼女は身体を起こす。古いソファーがギシギシ危ない音を立てるがそんな事は気にしない。昔に比べて随分神経が図太くなったとぼんやり考えながら手早く着替えを済ませて、埃とガラスの破片の積もった廊下を進み、同居人達が眠っている筈の部屋へ。が、
「……………居ない」
部屋には空っぽの寝袋が二つ。触れてみるが彼らの体温は残っておらず、大分前にこの場を立ち去った事が予測出来た。置いて行かれるのはいつもの事だ。だから大抵はそんな二人を探して歩くのだが、今日はそれをする理由も無かった。幸い『彼』からの連絡も無い。突然意識を通じてクフフフーと笑い始める『彼』からの交信もすっかり慣れたものになっていた。
「…散歩に、行こうかな」
麦チョコで栄養を摂る生活をする彼女にとって、不要なカロリーの消費は避けたいものだったが、何となく室内に居座りたくない気分だった。好物である麦チョコばかり与えて来る犬の行動が優しさなのか、嫌がらせなのかは判断しかねたが、麦チョコは主食ではなくおやつだといつかは主張したいと思う今日この頃。普段は貶すクセにいざという時には手を差し伸べる彼らが、骸からの命令という事を差し置いても嫌いにはなれなかった。部屋に戻り麦チョコが詰まった袋をポケットに詰め込んでから、彼女は黒曜ランドを後にした。



「今日という日が無ければね、私はもっと幸せになれていたのよ」
夕食の席で顔を伏せた母親がそう呟いた。少女…凪は一体母が何を言い出すのか理解が出来ず、キョトンとした表情で彼女を見つめる。先程まで母の傍らにあった、数ヶ月前から家族になった『お父さん』は仕事の電話の為に今は席を外していた。
「…お母さん…?」
「知ってる、凪?あの人と別れたのは全て貴女の所為なの」
母親は顔を上げようとはしない。席を立って部屋に戻りたい。そう思っても、凪の身体は凍り付いたように動かなかった。
「学校の先生が、貴女が学校で友達を作らないで孤立していると電話して下さった時、あの人が何て言ったと思う?」
「………」
「お前の教育が悪いんだ。…そう言ったの。許せないと思ったわ。でも、そもそも…凪、貴女を産んだのが間違いだったのよね」
あくまでも母親の口調は淡々としている。自分の言葉で揺れる少女の心に気付く事無く。薄々そんな母の気持ちに感づいていた分ショックは少なかったが、何か言葉を発する事は出来なかった。
ケーキもプレゼントも無い誕生日が当たり前になったのはいつからだったか。だが全てを捨てて家を飛び出すには少女はあまりに幼すぎた。
「……お母さん、私、部屋に戻るね」
辛うじてそれだけを掠れた声で告げ、その場を立ち去る。
誰からも必要とされない孤独に完全に突き落とされたのは、その日だったのかもしれない。



「…嫌な事、思い出しちゃったな…」
土手に座り込み子供達が泥だらけになりながら駆け回る野球場を麦チョコ片手に見つめていると、息子を必死に応援する母親達の姿も否応無しに視界に入る。その光景に加え、今日が12月5日…自らの誕生日であり、あの忌まわしい記憶の日でもある事に気付き。あの日の母親が記憶に過ぎり、思わず少女は眉を顰めた。
一体、子供を懸命に応援する母親達と自分の母親の違いは何なのだろうか。何があの人を変えてしまったのか。やはり自らの存在がいけないのか…。体育座りの体勢のまま膝に顔を埋めると、子供達の歓声が耳に良く届いた。
「あれ、クローム?」
不意に歓声に混じって自分に向けられた声が耳に入った。慌てて思考を中断し、顔を上げ…
「……ボス…」
ボンゴレのボス、沢田綱吉の姿が其処にあった。その傍らには母親である沢田奈々が。買い物帰りだろうか、手には食材やら何やらが詰まった袋が下げられていた。暫し落ちる沈黙。しかし言葉を選ぶかのように彷徨わされた少年の瞳が再びクロームのそれを捉えるまで、長くは掛からなかった。
「あのさ、…後で来てくれないかな。オレの家に」
意外な申し出だった。三叉槍を抱き締めて、漸く頷きを返すまでたっぷり30秒は掛かっていただろう。短気な相手(例えば犬とか)であれば怒り出しても良い筈だったが、この少年はそういった感情を滅多に表には出さない。その穏和さこそが、彼がボンゴレのボスとして人を惹きつける理由なのだろう。
「良かった。…あ、地図渡しておくね」
現在居る場所から彼の家までは案外近いようだった。
「最近ツナの友達が増えてお母さん嬉しいのっ!クロームちゃんっていうの?いつもありがとう。来てくれるのを待っているわね!」
ほぼ初対面にも関わらず頭をわしゃわしゃと撫でられ、反応に困りながらも何とかぺこりとお辞儀を返すと、彼女も笑顔を返してくれた。成る程、沢田綱吉の穏和さというかマイペースさは母親譲りなのだろう。
手を振って去って行く二人を見送るクロームの心は、先程とは異なる優しい暖かさに満たされていた。



沢田母子と分かれてから数時間が過ぎ、おやつの時間が過ぎた頃、漸く少女は沢田家に向かっていた。玄関の前で立ち止まり、室内から聞こえる悲鳴と奇声と笑い声に暫くたじろいでからやっとチャイムを押す。
ピンポーン。
バタバタと中から足音が聞こえ、勢い良く扉が内側から開かれる。(危うく扉と激突して大惨事になる所だった。)中から顔を出したのは顔は知っているが話した事はない二人の少女。
「いらっしゃい!」
「ハル、ツナさんが新しい女の子を連れて来るって聞いてからずっと待ってたんですよ!」
「クロームちゃん、っていうんだっけ?」
「お名前聞いた時はどんな子かと思ってましたけど、とってもキュートです!」
右手に京子、左手にハル、と掴まれてしまっては身動きは取れず。
一体どの言葉にどのように答えたら良いのかすっかり判らなくなりながらも、先程のツナの優しい笑顔のように、決して拒絶したいものではなかった。
廊下を真っ直ぐに突き進んだ先にあるのはどうやらリビングらしい。其方へと引っ張って行かれ、
「レディース・アンド・ジェントルマーン!クロームちゃんの到着です!」
ハルの上手いとはいえない英語に続いて開けられた扉。
いつか、幼い日に夢に描いた風景が其処にあった。綺麗に飾り付けが成された部屋。その部屋の中央のテーブルに置かれた大きなケーキ。並べられた美味しそうな食事。そして、『仲間』の姿。
「あのさ…クローム」
ツナがおずおずと進み出る。決してクロームは背が高い方では無いが、彼とは殆ど背が変わらない。未だ状況を完全には飲み込めていない少女の手を取り、彼は明るい笑顔を見せる。
「今朝、あの2人に今日が誕生日だって聞いたからゆっくり準備が出来なかったんだけど」
「俺ららって朝方まで知らなかったんらびょん!」
「あー、もうちょっと黙っててよ!うん…それで、でも少しでも楽しんでくれたら嬉しいなって。…誕生日、おめでとう」
長年抱えていたあの日の母の言葉の呪縛は、こんなにも容易く解けるものだったのだ。嬉しさを隠す事無く、初めて彼女は心からの笑顔を見せた。



『それで…誕生日会は楽しかったのですか、クローム?』
柔らかな土と草の感触を裸足になって楽しみながら少年と少女が歩く。
「…はい、骸様」
彼女は多くを語らない。しかしその一言と普段よりも柔らかい彼女の表情が、楽しかったという事実を明白に表しているような気がした。
ふと、彼が立ち止まり彼女と向き合う体勢になる。優しく頬に添えられる、自分のそれよりも大きな暖かい手のひら。瞬時視線が絡み合い、骸の表情に柔らかなものが浮かぶ。
『誕生日おめでとうございます、クローム。…お前が今日の日に生まれてくれて、本当に良かった』
熱いものが込み上げ、返したかった言葉は声にはならなかった。微笑と共に透明な涙が白い頬に伝い、掠れた声がありがとうございます、と言葉を紡ぐ。そっとその華奢な身体を抱き締める事で骸はそれに応えた。






《あとがきチック》
書きたかったのは、真ん中辺りの凪ママ&凪ちゃんのシーンと、一番最後のシーンでした。健気で一途で真っ直ぐな彼女だからこそ、笑える場所があってほしいなと思います。
口調あやふやでごめんなさい。時間を掛けていない所為で駄文が更に駄文になってごめんなさい。あうあうー!
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